2006年12月
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2006年も残り少なくなりました。
信号待ちの足下に、ひらりと舞い降りたいちょうの葉は
青いまま。東京・丸の内の一こまです。
先週、大阪御堂筋のいちょう並木もかなり緑のままの木が見られました。
夕暮れ時の散歩コースは、家々の庭先や窓辺に
様々な電球やオーナメントでクリスマス一色です。
真っ赤なモミジと桜の紅葉が仲良く寄り添う道筋や
垣根になった満天星も雪柳もほどよく色づき
季節の営みを懸命に続けている植物たちに出会いました。
今日は、とても珍しい植物が我が家にやってきたのです。
ウンリュウハシバミ。接ぎ木されてからでも十数年は経っていると言うことですが、
一メートルほどの細い幹の先にくねくねと細かく曲がりくねった枝振りが
50㎝ほどのかたまりでおもしろい姿を見せています。
一年で数㎝しか成長しないとのこと。年月によって蓄えられたいのちは
きゃしゃな、一見弱々しく見える背後に、上品で優美さをたたえています。
今年も多くの感動を植物からあたえてもらいました。
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2006年10月
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月の美しい夜です。
暴風雨のさったあと、
静謐な空気にさえざえとした透明感のある月です。
和三盆糖でつくられたウサギと月の和菓子を前に見入っています。
それにしても風の強い日が続き、
ぬけるような青空の色はヨーロッパを
旅した時の空の色を思い出しました。
八幡様の参道に色づきはじめた銀杏が数本、
その何本かはぎんなんの実をびっしりと付け重たげにゆれていました。
その本堂脇に天然記念物の「千本公孫樹」あります。
何本も何本もの公孫樹の木がぎゅーと束ねられたようにそだち、
大きく枝葉をのばしています。
説明書きに江戸名所図会に載っているとあり、
その年月がはぐくんだ樹勢は大風にゆさゆさと身を任せ、
動じることがありません。
神宮の銀杏並木、
横浜シルク会館前の並木、
黄金色の銀杏の葉が舞う頃
「…いちょう散るなり夕日の丘に……」
与謝野晶子のうたを思いだします。
色づく葉に対して、芽吹きの葉のかわいらしいこと!
当たり前なのに小さな葉はよく見ればいちょうの形をしていて感激です。
今年もぎんなん拾いの子供達に出会えるかな?
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2006年9月
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久しぶりの観劇。
「放浪記」の舞台で前半こぶし、そして最後の幕には色鮮やかな紅葉。
着物、ショール、羽織、コート・・・で季節を観るより
作り物の一本のこぶしで「季節は春なんだ」と妙に納得し、
四季の国日本を感じました。
帰路、おおぜいの人々が行き交うビル横の植え込みに、赤い花を見つける。
思わず近寄ると、赤い大輪のガーベラ。
さらによくよく目をこらすと、足下に何枚ものガーベラの葉を見つけました。
そういえば、この葉を生けたのはいつだったか?
以前はよくお稽古でも生けたものですが見かけなくなって久しいです。
しっかりした茎の先に赤い花、それもたった一輪。
きっと誰かがおせわをしているのでしょう。
どうぞ、誰もこの花を手折りませんように!
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2006年8月
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やっと梅雨が明け、数日の暑中で立秋に入るという季節のめぐりの所為でしょうか、
花のたよりも少しずれがあるようです。
今年の夏は、とても貴重な花に巡り会うことができました。
ミズアオイ・水葵(ミズアオイ科、ミズアオイ属)です。
この季節、花屋さんの店先でみかける水に浮かんだホテイアオイもおなじなかまですが
そのおかれている境遇は別世界…
かつて水葵は、田の畦、溜め池、水辺の浅瀬など群生していたと言われます。
農薬や洗剤等の生活廃液等による水質汚染や開発その他の環境の変化で
絶滅を危惧されるまで見かけられなくなったようです。
花屋さんの長老が来年は造成されてだめになるであろう水葵を見つけ
「水ものを生ける」テーマの取り合わせることができました。
ハート型の葉、すっきりと伸びたやさしげな茎…
咲いているはずの紫の花は手にできませんでしたが、
まさに一期一会、自生種の趣を堪能することができました。
心から、お花屋さんに感謝!
追記
数年前から、かなりの花屋さんで見かけたウオーターレタス(牡丹浮草)をもとめて
探し歩きました。柔らかな緑色で一輪の開いた花のようにみえます。やや肉厚ですが
水に浮かぶ浅黄色の花というイメージが夏に涼を呼ぶ植物として販売されていました。
それがどこの店にもなく、ホテイアオイだけ見かけました。
何故?どうやら、サトイモ科の多年草で熱帯、亜熱帯を原産とする外来種のこの植物は
大変な繁殖力で、池や沼に自生する在来種を根絶やしにしてしまうことが分かりました。
市場でも以前は、何個かプラスチック容器に入れて出ていたようですが、最近はまった
く見かけないとのこと。
温暖化の中、日本の植物の原風景まで変わることのないよう…
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2006年7月
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蒸し暑い日々が続き、各地で集中豪雨のニュースを耳にすると
梅雨が明け、夏突入です
毎年繰り返される季節の訪れに欠かせない花材・水物
その中でも蓮の思い出がいくつかあります
一番電車で蓮の田をめざしたり
この季節に鎌倉に行けば、八幡宮の蓮池に寄ります
各地で巡り会った蓮・・・
沖縄に行った時のこと
『はなのはなし』に夢中になり、蓮の話になりました
「水揚げの良い方法を教えてください」
「酢酸鉛は体の害になるといけないから・・・
工藤和彦先生のデモンストレーションの裏方をした時
先生が何枚も使う大きな葉の一枚を、
ひらいた片方の手でパン!と打ち付けるように叩きました
大きな葉の一片がパシッと音とともにちぎれ、
水が光って飛び散りました
それは見事に水の揚がった蓮の証拠 そんなことがあったの」
そして居合わせた人たちの熱心なまなざしの中から
「沖縄には蓮がないんです。生ける時は本州から取り寄せます」
友人に蓮の研究会に所属して、何十種もの蓮の種類を
自宅で育てている愛好者がいます
タイミングが合わず、観蓮会?に伺うことができずにいますが
ぜひこの夏は、蓮の思い出の1頁を増やしたいと願っています
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2006年5月
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「さあー京都へ行こう」…京都を日帰りした。
先ずは、京都駅から北へとむかい金閣寺を散策する。
受付近くの唐門の手前でイチイガシ・櫟樫としばしの
語らいの時を持つ。「江戸時代の初期に植栽されたか、
すでに成木であったか、」と説明書きを目にする。
いけばな誕生の土壌の一片に、照葉樹林とその文化が
あるが、シイ、タブの木等と同様、照葉樹である。
400年以上の樹齢を重ねたイチイガシの樹形は、
深く皺を刻み、風格と毅然とした威厳すら感じる
堂々とした姿であった。
金閣を映す鏡湖池には燕子花が季節を語ってくれていた。
ふと、銀閣寺行きのバスが目にとまり予定外の行動となる。
金閣寺・足利義満、銀閣寺・足利義政。修学旅行以来の
コースになった。
東山慈照寺の二つの国宝のうち、東求堂内の書院同仁斎は
いけばなが方式を定める空間の原点を見ることができる。
念願かなって、なんとその空間に座することができた。
違い棚の壁面には、かすかに梅が描かれていたことが見え、
付書院の明かり障子をほどよく開けると、
燃えるように咲き誇る霧島つつじの赤い花と緑が、
一幅の軸物としてかかり息をのむ美しさであった。
ラッキー!しあわせ~。心の中で叫んでいます。
本堂西の間で拝見した「たてはな」も心は燕子花でした。
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2006年4月
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季節は巡り、はる!
カキツバタ、イチハツ、都忘れ、薊、桜(染井吉野、陽光、八重桜)、
山吹、虫狩、ナナカマド、つつじ、こでまり、・・・・・・
今週手にした花です。
花と言えばさくら。
毎年巡りくる桜の季も、人それぞれに様々な思い出に彩られています。
各地で観る桜、また外国での思い出。特にオランダでの桜吹雪は、
胸を張って歩きたくなるほど”日本の桜”でした。
とき時お伺いするお宅にかなりの樹齢の桜が門の傍にあります。伺うたびに
こつこつとこぶをつくり、小さなほこらも見られる木肌に手をあてて「こんにちは」
と、挨拶します。根方に近い隆起したこぶのところに数センチの細い枝を出し
その先に一輪の花を見かけます。見上げれば何百という花の群れ、
風にかすかにゆれる清楚できりりと輪郭をみせる、一輪の桜。
来年も会えると良いのですが。
このさくら 友みるまでと希いしも やまいつれ逝く ただなみだす
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2006年3月
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なぜ!
一本のイイギリを見かける
身を乗り出すように、斜めに生育するかなりの大木
傾斜地で、まっすぐ伸びようとすれば建物がじゃまをしている
けなげに、というよりたくましく横枝もどんどん四方に広げ
毎年、ブドウの房状のオレンジがかった赤い実を
幾房もたわわに下げる
いいぎり・飯桐、南天桐と呼ぶことも
お正月のいけばなでも、よく取り合わせるが
いつもは早々に実を見かけなくなるのに
今年は、東大寺のお水取りも済んだこの頃でも
見事に下がる実に、「どうしたの?」と問いかけている
もしかしたら?
今年の実はなにか理由があって美味しくなく
鳥がついばむこともなく残っているのでしょうか
梅も椿も二週間ほど開花が遅かったとか
それでも桜の開花予報は昨年よりずっとはやいと
たしかに春ですーーーイイギリの実はいつまで見られるのでしょう
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2006年2月
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花展のお知らせ!
いけばな小原流展
小原豊雲生誕100年・創流111年 盛花 ーいま・そして
会期:前期 3月16日(木)-18日(土)
:後期 3月19日(日)-21日(火)
会場:東京日本橋高島屋8階ホール
入場料:当日券1,000円
*1階ホール、正面の6面のウインドーもご覧ください
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2006年1月
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初春
今年一年が平和でありますように。
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